血液を造り、酸素の運搬役 不足すると貧血に

鉄は、大きく2種類に大別されます。1つは赤血球のヘモグロビンの材料となり、酸素を運ぶ「機能鉄」です。これは体内の鉄の約70%を占めています。

もう1つは、肝臓や骨髄、筋肉などの蓄積される「貯蔵鉄」です。機能鉄が不足すると、体内に放出される仕組みになっています。また酵素の構成成分となって、エネルギー代謝を助ける働きもあります。

鉄は吸収率が低く、不足すると「鉄欠乏性貧血」になります。特に女性は、月経によって不足します。鉄の吸収をよくするビタミンCと合わせながら、進んで鉄を多く含む食材を食べるようにしましょう。また鉄製のフライパンで調理すると、料理に鉄が溶け出て、補給源にもなります。

不足すると…!?

鉄は血液の主成分で、全身に酸素を運ぶ役割があります。不足すると、鉄欠乏性貧血になり、全身が酸欠状態に陥り、集中力の低下や、息切れ、動悸、頭痛などの症状を引き起こします。特に成長期の子どもや月経のある女性、そして妊婦は不足しやすくなるので、意識して摂るようにしましょう。

摂りすぎると…!?

吸収されにくい成分のため、過剰症の心配はほとんどありません。しかし、サプリメントなどで耐用上限量以上に摂取を続けると、胃腸の働きに異常が出て、嘔吐のなどの症状が出てきます。鉄が肝臓や膵臓に沈着すると、「鉄沈着症」という臓器の機能を低下させる疾患へとつながるので注意しましょう。

鉄を多く含む食品

肉類ではレバーなど内臓に多く含まれています。魚介類は貝類に多く含まれます。野菜や大豆製品にも含まれていますが、吸収率が低いです。(食品100g中)

  • 肉類
    豚レバー:13.0mg、鶏レバー:9.0mg、牛肩赤身肉:2.7mg
  • 魚介類
    しじみ:5.3mg、いわし(丸干し):4.4mg、あさり:3.8mg
  • 野菜
    大根の葉:3.1mg、小松菜:2.8mg、そら豆:2.3mg
  • その他
    干しひじき:5.5mg(10g中)、納豆:3.3mg、木綿豆腐:0.9mg

1日の摂取基準

年 齢 推奨量(mg) 耐容上限量(mg)
男/女
0~5ヶ月 0.5* 0.5*
6~11ヶ月 5.0 4.5
1~2歳 4.0 4.5 25/20
3~5歳 5.5 5.5 25
6~7歳 6.5 6.5 30
8~9歳 8.5 8.0 35
10~11歳 10.0 9.5(13.5) 35
12~14歳 11.0 10.0(14.0) 50/45
15~17歳 9.5 7.0(10.5) 45/40
18~29歳 7.0 6.0(10.5) 50/40
30~49歳 7.5 6.5(11.0) 55/40
50~69歳 7.5 6.5(11.0) 50/45
70歳以上 7.0 6.0 50/45

*は目安量です。( )内は月経有の場合です。妊婦は+2.5~15.0、授乳婦は+2.5を付加してください。
「日本人の食事摂取基準」より抜粋

一緒に摂ると効能が高まりそうな栄養素

ビタミンC

鉄には、赤身の肉類や魚に含まれる「ヘム鉄」と、野菜や大豆製品に含まれる「非ヘム鉄」があります。ヘム鉄はカラダに吸収されやすいですが、非ヘム鉄は、カラダに吸収されにくく、排泄されてしまいます。そこで、ビタミンCを一緒に摂ると、非ヘム鉄でもカラダへの吸収率を高めてくれます。デザートなどでビタミンCが豊富な果物を取り入れるようにしましょう。

豊富な食品:緑黄色野菜、いも類、果物

タンパク質

タンパク質は、鉄と共に赤血球の材料となり、血液を造ります。また鉄を結びついて腸からの吸収を促す働きもあります。特に肉や魚など動物性食品に含まれている良質なタンパク質は、タンパク質を構成する必須アミノ酸のバランスが良く、栄養価も高いのが特徴です。

豊富な食品:肉類、魚介類、大豆製品、卵

鉄を含む食品を食べる時の注意点

加熱調理の時

鉄は水溶性なので、調理法によって、栄養素が溶け出してしまいます。あさりやしじみは味噌汁やスープとして、そして肉や魚は煮込み料理にしていただきましょう。煮汁まで活用できる料理なら、流出した鉄も煮汁から補えます。納豆など、そのまま食べる食品では流出は少ないでしょう。

コーヒーや玄米との食べ合わせはNG!?

コーヒーや紅茶、ぶどうに含まれているタンニンという苦み成分は、鉄の吸収を妨げる作用があります。また、食物繊維や豆類の皮、玄米にはフィチン酸が多く含まれます。このフィチン酸も鉄の吸収を妨げるので、一緒に摂らないようにした方が鉄の吸収はいいでしょう。

まとめ

  • 赤血球のヘモグロビンの材料になり、全身に酸素を運びます。
  • 不足すると「鉄欠乏性貧血」を引き起こします。
  • 吸収率が低いので、ビタミンCなどと合わせて摂りましょう。