7、ライフステージにあった栄養の摂り方
年齢や発育などに応じて、カラダが必要とする栄養素が異なります。ライフステージに見合った食事を心がけましょう。
赤ちゃんから高齢者まで栄養の摂り方は変化
人の人生は、年齢やカラダの発育、機能の変化などにより、乳幼児期、少年期、成人期、妊娠・授乳期、高齢期に大きく分かれます。これをライフステージといい、ステージごとに摂るべき栄養素の種類や量は異なるのです。
乳幼児期は、食習慣の基本を覚える時期
生後5~6ヶ月頃までは、母乳あるいは、人工乳だけを栄養源としています。離乳食を経て、1歳半頃からは大部分の栄養を食べ物から摂るようになります。そして5歳頃までに基本的な食習慣を身につけていくことになります。この時期に、健康的な食習慣と食事の楽しさを教えることが大切ですね。
最初は母乳だけですが、歯が生えてくると食品を噛めるようになるため、消化を促すためにも、よく噛んで食べる習慣を身につけさせましょう。
この時期の食事は、濃い味付けや強い香辛料は控え、薄味の食事に慣れさせることも大切です。幼児期以降は、主食・主菜・副菜の揃った和食を心がけましょう。
乳幼児期の栄養の摂り方(0~5歳)
カラダの発育が目覚ましい時期です。乳児期の後半から、栄養素の必要量はどんどんと増えていきます。
乳児期(0~1歳)
乳児期のカラダの変化
- 味覚が発達します。
- そしゃくと嚥下を覚えます。
- 離乳が進むにつれて、消化機能も発達していきます。
母乳や人工乳で栄養をしっかりと摂りましょう
母乳には、病気の感染を予防するラクトフェリンをはじめ、乳児の発育に必要な栄養素がバランスよく含まれています。場合によって、母乳に近い成分が配合された人工乳を利用します。
生後5ヶ月頃から離乳食を始める
生後5ヶ月以降は、母乳や人工乳ではエネルギーや栄養素を補い切れなくなるため、離乳食に以降していきます。潰し粥、すりつぶした野菜など、舌で潰せるかたさのものから少しずつ試していくといいでしょう。
幼児期(1~5歳)
幼児期のカラダの変化
- 味覚が発達して、偏食が出てきます。
- 乳歯が生えそろいます。
- 体重は乳児期の2倍、身長は1.5倍になります。
できるだけ数多くの種類の食品に慣らしましょう
偏食をなくして、大人になってからもしっかりと栄養を摂るために、幼児期から数多くの食品に慣れさせ、食べられるものを増やしておきましょう。ただし、無理強いはストレスとなるので、様子を見て与えましょう。
3食で摂れない栄養素は間食で補いましょう
幼児期は活動量が多いので、1日に必要なエネルギーや栄養素も多いですが、1度に食べられる量は、まだカラダが小さいので、少ないです。3食で摂り切れない分は、おやつで補いましょう。おやつには菓子ばかりではなく、牛乳、乳製品、いも類、穀類などを使ったものを食べさせてあげましょう。
少年期の栄養の摂り方(6~19歳)
カラダがどんどん成長する時期です。タンパク質、鉄、カルシウムなど、カラダを造る栄養素をしっかりと摂りましょう。
学童期(6~11歳)
少年期のカラダの変化
- 身長が伸びる時期と、伸びが緩やかな時期があります。
- 永久歯に生え変わります。
タンパク質とカルシウムで筋肉と骨の発育を促しましょう
筋肉量が増えるため、その材料となるタンパク質を十分に摂りましょう。身長・体重の増加に伴い、骨も太く長くなります。意識して牛乳や乳製品などを摂り、カルシウムも補いましょう。
食べ過ぎと運動不足に注意し、肥満を予防しましょう
ハンバーグやスパゲッティ、スナック菓子、ジュース類など、高エネルギーで脂質や糖質の多いものを好む時期です。そのため、注意しないと、肥満児になる可能性が出てきます。野菜の割合を増やし、食べ過ぎを抑え、運動量を増やすなど肥満予防を心がけましょう。
思春期(12~19歳)
思春期のカラダの変化
- 男女の体格差がハッキリとしてきます。
- 骨の量が増えて、骨密度が高くなります。
- 女子は皮下脂肪が増えてきます。
鉄の必要量がピークに!特に女子はしっかりと摂りましょう
男女ともに、カラダが飛躍的に発達する時期です。部活動などでカラダを動かすことで、より多くの血液が必要となる時期でもあります。意識して鉄を摂るようにしましょう。女子は月経の影響で貧血になりやすいため、多めに摂るよう心がけてください。
朝食は抜かず、毎日摂る習慣を身につけましょう
夜、遅い食事や夜更かしによる睡眠不足などで、食欲わかず、朝食を抜く子どもが増えています。特にこの時期に朝食を抜くと、頭が働かないだけではなく、1日に必要なエネルギーや栄養素を補い切れません。朝食は欠かさず摂る習慣を身につけましょう。
成人期の栄養の摂り方(20~64歳)
不規則な生活習慣から、食生活も乱れがちになります。生活習慣病の予防のためにも、栄養バランスを考えた食生活を送りましょう。
青年期(20~29歳)
青年期のカラダの変化
- 成人期の中で、カラダの機能が特に発達します。
- 心臓、肺、腎臓、肝臓などが成熟します。
食事に無頓着。食事内容を意識しましょう
仕事で忙しいなど、食生活にまで気を配れない人が多く、特に朝食の欠食率が高くなります。朝食を欠かさずに摂り、不足しがちな野菜類を積極的に摂りましょう。また女性ではスリム体型を良しとする傾向があるため、故意に少食とする人も多い年代です。
中年期(30~49歳)
中年期のカラダの変化
- 40歳頃からカラダの機能が低下し始めます。
- 加齢による老化現象が始まります。
美食意識が高く、食べ過ぎに注意しましょう
美食意識が高くなり、飲み会や接待など、外食が増え、過食による肥満を招きやすい時期です。腹八分目に抑え、肉より魚、バターよりオリーブオイルやゴマ油などの植物油を選ぶなど、脂質を控える工夫をしましょう。
老年期(50~64歳)
老年期のカラダの変化
- 視力の低下、毛髪の変化など、老化現象を自覚する時期です。
- 筋力の低下とともに、骨密度も低下してきます。
栄養バランスに気を配り、免疫力低下を防ぐ
免疫力が低下してくる年代で、病気にもかかりやすくなります。免疫力を高めるためには、栄養素のバランスをよくすることに加えて、緑黄色野菜に多く含まれるβ-カロテンや、魚介類、ナッツ類に多く含まれるビタミンEなど、抗酸化作用のある栄養素を意識して摂るようにしましょう。
更年期の女性
女性は、50歳前後に閉経を迎え、エストロゲンなどの女性ホルモンの分泌が低下します。それにより、カラダに様々な不調が出てきます。
更年期のカラダの変化
- 骨密度が低下し、太りやすくなります。
- のぼせたり、手足の冷えが起こりやすくなります。
- イライラしたり憂うつになるなど、精神面にも影響が出てきます。
骨粗しょう症予防にカルシウム補給を!
エストロゲンの分泌が低下するため、カルシウムが骨に沈着しにくくなります。これが骨粗しょう症の原因にもなります。牛乳、乳製品、小魚、小松菜などからカルシウムを積極的に摂るようにしましょう。
脂質の摂りすぎを控え、肥満を予防しましょう
閉経後は、内臓脂肪の蓄積を抑えるエストロゲンの分泌が低下します。そのため太りやすくなるのです。脂質やエネルギーの摂りすぎを控えて、適度な運動を習慣化するなど、肥満を予防するよう心がけましょう。
妊娠期・授乳期の栄養の摂り方
妊娠期・授乳期の食生活は、赤ちゃんの発育や、母親の体調管理のために重要です。栄養不足にならないよう、意識して過ごすよう心がけましょう。
妊娠初期(妊娠4~15週)
妊娠初期のカラダの変化
- 乳房が張ったり、乳輪が黒ずんでくる。
- つわりで精神的に不安定になる。
ビタミンAの摂りすぎに注意しましょう!
レバーや鰻(うなぎ)などに多く含まれるビタミンAは、摂りすぎると赤ちゃんの形態に影響する懸念があります。食べる量や回数を減らしておきましょう。目安としては、1日650~700㎍REまでです。
妊娠中期(妊娠16~27週)
妊娠中期のカラダの変化
- おなかの大きさが目立ち始めます。
- 腰痛や肩こりが起こりやすくなります。
- 貧血になりやすくなります。
鉄とカルシウムをしっかりと摂りましょう
安定期に入ると、つわりのあった頃に比べ、食事内容に気を配りやすくなります。牛肉の赤身や、葉物野菜に豊富な鉄、乳製品に豊富なカルシウムは赤ちゃんに優先して使われる栄養素です。しかし母体に不足しやすい栄養素なので、十分に摂るようにしましょう。
妊娠後期(妊娠28~39週)
妊娠後期のカラダの変化
- 胃の圧迫感や胸ヤケが起きやすい。
- 動悸や息切れが出やすくなります。
- 便秘や痔が起きやすくなります。
むくみ予防のため、塩分を控えめにしましょう
後期は、手足がむくみやすくなります。むくみは体重増加にもつながるため、原因となる塩分の摂りすぎには注意が必要です。特に、外食やインスタント食品は高塩分になるため、控えるようにしましょう。
授乳期
授乳期のカラダの変化
- 乳腺が発達し、乳房が肥大してきます。
- 妊娠中の変化が回復します。
(血液量、局所の痛みなど)
母乳に使われる鉄やエネルギーを補いましょう
授乳期にとった栄養やエネルギーは、母体と母乳に使われるため多めに摂る必要があります。特に鉄は、出産時にも失われるため、意識して摂るようにしましょう。母乳に水分が使われるため、こまめな水分補給も大切です。
高齢期の栄養の摂り方(65歳以上)
高齢期の食事は、食べやすいものが中心になりがちです。食事内容が偏ってしまうので、栄養バランスが崩れないよう注意しましょう。
高齢期のカラダの変化
- 様々な代謝機能が低下してきます。
- 消化・吸収機能や、味覚・嗅覚機能が低下してきます。
- 歯の損失により、かたいものが食べにくくなります。
骨を健康に保つため、カルシウムを積極的に摂りましょう
加齢に伴い、カルシウムの吸収が低下し、骨が弱くなってきます。骨粗しょう症や骨折予防のため、牛乳や乳製品などから積極的にカルシウムを補いましょう。カルシウムの吸収を助けるビタミンDと合わせて摂ると効果的です。
糖分、塩分を控えめにして、糖尿病や高血圧を予防
血糖値を正常に保つ働きも低下してくるため、糖尿病が起きやすい年代です。味覚の変化により、濃い味付けを好むようになり、塩分の摂りすぎによる高血圧の懸念も高まります。糖分、塩分はともに摂取量は控えておきましょう。